カルロ・クリヴェッリ『マグダラのマリア』 [美術]
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カルロ・クリヴェッリ(Carlo Crivelli)『マグダラのマリア』 アムステルダム王立美術館蔵
この絵は、サマセット・モーム賞受賞のサラ・ウォーターズ『半身』(創元推理文庫)のカバーに使われていたので、ご覧になった方も多いと思う。一目見ると忘れられない強烈な印象を残す祭壇画である。祭壇画とは、フレスコ画と並び、教会を飾る絵画の二大ジャンルの一つである。特にルネサンス期においては、華麗な金箔額縁に収められて人々の視線を引きつける花形であり、工房にとっては最高の晴舞台でもあった。
カルロ・クリヴェッリ(1430/35―95)は、ルネサンス期の画家で、ヴェネツィア生まれ、船乗りの妻を誘惑した罪で、禁固6ヶ月と罰金の判決を受け、その後故郷を離れ放浪の旅に出る。クリヴェッリは、忘れられた画家であり、ヴァザーリの『芸術家列伝』に言及はなく、グランド・ツアーのコースからも無視されていた。グランド・ツアーとは、英国貴族の子弟が、古典的教養の修得のために行うヨーロッパ大陸への旅行のことで、最終目的地は常に、古代ローマの遺跡が残り、またルネサンスの中心地であったイタリアであった。つまり、クリヴェッリの絵は、修得すべき古典的教養とは見なされていなかったのである。
この『マグダラのマリア』は、澁澤龍彦が偏愛した絵として知られている。澁澤は、『幻想の肖像』のなかで、以下のように述べている。
大胆な線で描いた髪の毛は、ボッティチェルリの貝殻から生まれたウェヌスの髪に似て、束になって大きくうねり、両肩から前と後ろに分かれ、腰のあたりにまで及んでいる。この重々しい輝くばかりな金髪の、壮麗さときたらどうだろう!カルロ・クリヴェルリ特有の、冷たい金属的な感触をあたえる黄金の色調が、ここで見事な絢爛たる効果を発揮しているのを、ゆっくり鑑賞していただきたい。
宝石がちりばめられた黄金の工芸品を連想させる、冷たく美しい肖像画で、特に目の表情と、スカートを持ち上げる手の形が絶妙である。僕が見た日本語版の画集では、1475年頃の作品とされているが、アムステルダム王立美術館のHPでは、1487年となっている。たぶん情報の新しい後者が正しいのであろう。
マグダラのマリアとは、ガリラヤ湖西岸マグダラ出身の聖女で、イエス・キリストにより〈七つの悪霊〉を追い出してもらったと言う。その後イエスに献身的に仕え、イエス処刑際には、その場から退いてしまった弟子たちとは異なり、最後まで見届けたという。また復活後のイエス・キリストに最初に出会った者達の一人とされている。かつて遊女であったとの説もあるが、他の人物と混同された結果、一般に罪を悔いた女というイメージが流布したとする説の方が有力なようだ。またイエスの処刑日が近づいたある日、高価なナルドの香油をイエスを足に塗り、自分の髪の毛でそれをぬぐったという「ベタニアのマリア」と同一視され、美術作品では、香油壺を持つ髪の長い女性として表される場合が多い。

クリヴェッリの画集は、トレヴィルからピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ3として、『カルロ・クリヴェッリ画集』が出されていたが、出版元の倒産のため現在では入手困難になっている。幸い、この画集は発売時に購入していたが、シリーズ全十冊のうち六冊しか手元にない。『イタリアのマニエリスム画集』、『北方のマニエリスム画集』は、買っておくべきだったと後悔している。
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クリヴェッリの絵は以下のサイトや本で見ることが出来ます。http://www.artcyclopedia.com/artists/crivelli_carlo.html

『カルロ・クリヴェッリ画集』(吉澤京子解説、トレヴィル、1995年)(絶版)
マグダラのマリアに関する本 【Amazon】
ヴァザーリの『美術家列伝』 以下の三冊で主だった芸術家は、ほぼ網羅されています。
『ルネサンス画人伝』 (平川 祐弘訳 白水社)
『ルネサンス彫刻家建築家列伝』(森田義之訳 白水社)
『続 ルネサンス画人伝』(平川祐弘、小谷年司、他、訳 白水社)
本城靖久『グランド・ツアー―英国貴族の放蕩修学旅行』 中公文庫(品切れ)
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カルロ・クリヴェッリ(Carlo Crivelli,1430~35 ―95)は、忘れられた画家である。ヴァザーリの『画人伝』にも言及はなく、生まれた年もはっきりしない。彼の名前が記録の上に初めて表れるのは、1457年のヴェネツィアの裁判記録である。クリヴェッリは、船乗りの妻を誘惑し、数ヶ…[続く]
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トラバさせていただきました。(草稿中ですが・・)
大学の学部時代の研究対象がCRIVELLIです。
ついつい目を細めてしまいました。
お時間のある折にでも、遊びにおいでください。
http://blog.goo.ne.jp/crivelli
by マユ (2005-03-12 23:56)
マユさん、トラックバック&コメントありがとうございます。
専門家に読んでいただき、恐縮しています。
ブログを興味深く拝見させていただきました。
特にマグダラのマリアとナグ・ハマディ文書に関する記述は
興味深かったです。
by lapis (2005-03-13 01:05)
こちらこそ、ご訪問いただき有難うございました。
お厭でなければ、リンクを貼らせてください。
また折々に遊びに参ります。
by マユ (2005-03-13 10:56)
もう一つ、TBさせて頂きました。本の「マグダラのマリア」の中にも口絵でしっかり取り上げられていました。カルロ・クリヴェッリの作品。やはり際立って、特徴があるマグダラですね。ちょっと厳しげですが、神にとりなしてくれるのかな?
by alice-room (2005-04-22 15:30)
alice-roomさん、TB&コメントありがとうございます。
やはり、あの口絵の中では、クリヴェッリだけが、レリーフのようで異質ですよね。
その本は、僕も買いました、でもいまだに積ん読状態です。(苦笑)
by lapis (2005-04-22 23:03)
Ronald Lightbownのクリヴェッリ本、実際にお持ちですか?
もしお持ちであれは、内容は如何なものでしょう。(主観大歓迎)
そんな本があったとはうっかり読み飛ばしていたのですけど、私が研究していた頃にはこんなまとまった本は存在せず、もっと古くRUSHFORTHとかZAMPETTIとかのがマトモな本で、あとは地元アスコリ市出版のもののみ。
もう専門ではなくなってしまったけど、いい本なら買いたいなぁ、でも高いなぁ、なんて逡巡しているのでございます。
by 今更なのですが・・ (2005-04-26 00:16)
ごめんなさい。。。。慌てて名前にサブジェクト入れました(-_-)、↑マユです。
by マユ (2005-04-26 00:18)
残念ながら、持っていません。良い本らしいので僕も欲しいのですが、高いので迷っています。そこで、忘れないように、メモ代わりに書いておきました。
この書き方だと、まるで持っているような感じがしますね。すみませんでした。
もし、マユさんがお買いになったら、こちらの方こそ情報をお願いします。
by lapis (2005-04-26 00:47)
お返事有難うございました。
日本語じゃあるまいし、なかなかのマニアでないと手が出ませんよね。
いつか、誰かにプレゼントをねだれる機会があったら、これをリクエストしてみようかな。
by マユ (2005-04-26 00:55)
毎度失礼致します。私のブログからこの記事にTBさせて頂くのが3つになってしまいました。一応、違う記事でマグダラのマリア絡みということで大目に見てもらえれば幸いです。
参考までに、黄金伝説から訳出してみました。本当に直訳で時間ができたら、もう少し文章としての体裁を整えるつもりですが、なにかの参考にはなるかもしれませんので。誰かがネットで公開してくれれば、みんなの役に立つ(?)かもしれないのがいいですよね!私も普段恩恵に浴してますので少しだけ還元をしてみました(笑顔)。
by alice-room (2005-05-11 23:30)
alice-roomさん、TBありがとうございます。
TBは、大歓迎ですので、全然OKです。
黄金伝説のマグダラのマリアは、とても楽しみにしておりましたので、これから早速、読ませていただきます。素敵なTB、ありがとうございました。
by lapis (2005-05-12 00:02)
クリヴェッリ繋がりでこちらもTBお願いしまっす。
初めて、真面目に書いてしまった・・・ちょっとハズカシイです(笑)
by マユ (2005-08-26 23:47)
マユさん、TB&コメントありがとうございます。
流石に、専門家は、違います。久しぶりに画集を取りだし、わくわくしながら読ませていただきました。「受胎告知」は、以前ロンドンに行ったとき本物を見る機会がありました。疲労のピークだったので、見た記憶しかないのがとても残念です。(苦笑)今回、あらためて細部を見ると、思っていた以上に面白い絵だということを再認識しました。とても素敵な記事にTBしていただきありがとうございました。
by lapis (2005-08-27 00:31)
はじめまして。リカと申します。Juliaさんのブログからとんできました。
美術の記事をざっと読ませていただいたんですが、とっても素敵なブログですね。そしてものすごく勉強になります。
クリヴェッリのこの絵は私も好きで、マグダラのマリアに関連してTBさせていただきました。ちなみにモロー大好きです。
またちょくちょくお邪魔させていただきますね。よろしくお願いします。
by リカ (2005-09-12 01:04)
リカさん、はじめまして
TB&コメントありがとうございます。
クリヴェッリやモローをお好きな方と知り合えて、とてもうれしです。
先ほど、貴ブログにお邪魔させていただきました。いろいろ興味深い記事がありましたので、またお邪魔させていただくと思います。
今後とも、よろしくお願いいたします。
by lapis (2005-09-12 22:51)
Megurigamiさん、TBありがとうございます。
また、よろしくお願いいたします。
by lapis (2006-01-21 20:29)
素晴らしいページ。こんなページがあることをもっと早く知りたかった。わたしのブログの「お気に入り」に入れさせていただきます。私は絵を描いています。「山口ももり」でj検索してもらったほうが速いと思いますのでアドレスは書きませんが、お時間あればゼヒゼヒ。
by 山口ももり (2006-01-28 08:35)
山口ももりさん、はじめまして
コメントありがとうございます。さらには、リンクまでしていただいたそうで、とても嬉しいです。僕も昔絵を描いていましたが、もう十年以上描いていません。(苦笑)
ももりさんのブログは、何だか久しぶりに絵が描きたくなるような素敵なブログでした。
by lapis (2006-01-28 21:10)
祭り開始じゃ!踊れ、踊らんかい! (爆)
・・というわけで、はじまりましたよ。
lapisさまのとこで一番アクセスの多い記事にTBしない手はない!
ということで早速のTBです。久々にこの記事に伺ったら、あら凄い盛り上がり。
いぃなぁ~(笑)
by マユ (2006-02-13 20:41)
マユさん、TB&コメントありがとうございます。
カルロ・クリヴェッリ祭り、楽しませていただきました。
流石ですね!リズム感ゼロなのですが、踊りたくなりました。(笑)
これからの展開が、とっても楽しみです。
リクエストに答えていただき、ありがとうございました。
by lapis (2006-02-13 23:42)
こんにちは。
お休みしていたので見る機会の無かった記事です。(*´∇`*)
ダビンチコードの公開と共に「マグダラのマリア」と言う
名前も一杯聞きます。
この間もテレビで解釈の番組していました。
不思議な女性ですが、この絵はすごく綺麗だと思います。
by tsubame_diary (2006-06-02 15:20)
>マイケルさん、nice!ありがとうございます。
過去記事を読んでいただき、ありがとうございました。
また、よろしくお願いいたします。
>tsubameさん、nice!&コメントありがとうございます。
「ダビンチコード」の影響で、「マグダラのマリア」に興味を持つ人がかなり増えているようです。関心が高まるのは良いことなのですが、テレビ番組は、話題になればよいという程度のかなりいい加減なものが多いらしいので、あまり信用出来ないようです。
by lapis (2006-06-02 21:00)
yutakamiさん、nice!ありがとうございます。
過去記事を読んでいただき、ありがとうございました。
また、よろしくお願いいたします。
by lapis (2007-01-24 16:47)