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サンリオSF文庫のフィリップ・K・ディック [外国文学]

フィリップ・K・ディックは、もっとも好きなSF作家の一人である。 代表作は、映画『ブレードランナー』の原作となった『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『高い城の男』『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』等がある。映画化された作品も多く、『トータル・リコール』『マイノリティ・リポート』『ペイチェック』等もディック原作である。

現在、海外SF作品は、おもにハヤカワSF文庫と創元SF文庫から刊行されている。しかし、以前は、この他にサンリオSF文庫があった。サンリオSF文庫とは、ハローキティで有名なサンリオが、SFブームにのり、1978年に創刊したSF文庫である。厳密にはSFでない作品や、マニアックなラインナップが多かったので、一般読者にはあまり受け入れられず、1987年に廃刊になってしまった。絶版後、古書店において定価より高い値段で売られたことでも有名であった。

サンリオSF文庫からは、ディック作品は21冊刊行されており、その中から何冊か紹介する。

 

『ヴァリス』 1982 大瀧啓裕訳

 『ヴァリス』は、『聖なる進入』、『ティモシーアーチャーの転生』と続く三部作の第一作目である。裏表紙によると『ヴァリス』とは、「つまり新グノーシス主義による無神学大全VALIS、さらに幽明の堺を超えて不死の人となったディックその人の生誕を告げる遺書である。」表紙の絵は、藤野一友『抽象的な籠』で、福岡市立美術館が所蔵している。この本は、現在は、創元SF文庫から復刊されている。

 知恵が生まれたのだ。神性ではなくして。一方の手で人を癒しながらもう一方の手で人を殺す神性・・・・・そんな神性は〈救済者〉ではない。わたしは心の中でつぶやいた。ありがたいことだと。
                                (フィリップ・K・ディック『ヴァリス』)

 

 

『聖なる侵入 』 1982 大瀧啓裕訳

『聖なる侵入』は、 『ヴァリス』三部作の第二作で、 前作に引き続き表紙は、藤野一友である。この本も創元SF文庫から復刊されている。『ヴァリス』よりも物語性が強くなっている。カトリック教会と共産党が支配する地球に、アシャーは、妻のリビスを伴って外宇宙から帰還しようとしていた。リビスの体内にはかつて地球から追放された神格ヤーウェの子が宿っていた。それを知った大修道院長は、彼らを抹殺しようとする。

 わたしたちの世界を元の戻すつもりだわ」ジナが言った。
イマヌエルが言った。「まずあいつを殺そう」イマヌエルが片手をあげた。山羊は消えた。
「いなくなったんじゃないわ」ジナが言った。「世界に姿を隠したのよ。偽装したんだわ。わたしたちにはもう見つけることさえできないのよ。あれが死なないことは知っているでしょう。わたしたちと同じように永遠の存在なのよ」
                             (フィリップ・K・ディック『聖なる侵入』)

 

 

『ティモシーアーチャーの転生』 1984 大瀧啓裕訳

 『ヴァリス』三部作の三作目であり、ディックの遺作でもある。創元SF文庫から復刊されたが、創元文庫版も現在は絶版である。この表紙も藤野一友である。藤野には、 『天使の緊縛―藤野一友=中川彩子作品集』という画集がある。

 

 

 

『怒りの神』 1982 仁賀克雄訳

 『怒りの神』は、ディックとロジャー・ゼラズニイというビッグネーム同士の合作である。表紙のイラストはジャーニー・ワーツである。最近では、ゼラズニイの本も絶版が多く、『光の王』『わが名はコンラッド』ぐらいしか手に入らないようだ。『伝道の書に捧げる薔薇』は、好きな作品だったので、絶版なのは、とても残念である。 

 

 

『アルベマス』 1987 大瀧啓裕訳

 『アルベマス』は、ディックの死後に発見されたもう一つの『ヴァリス』であり、サンリオSF文庫の最後の一冊でもある。創元SF文庫から、復刊されたが、現在は絶版である。表紙の絵は、K・G・ヤナセである。

 

 

『ブラッドマネー博士』 1987 阿部重夫・阿部啓子訳

『ブラッドマネー博士』は、長い間絶版になっていた作品で、Amazonでは定価680円の文庫本に10,500円のプレミア価格がつけられていた。表紙の絵は、K・G・ヤナセである。今年に入って、ようやく創元SF文庫から、『ドクター・ブラッドマネー―博士の血の贖い―』という題名で、別の翻訳が出版された。

ドクター・ブラッドマネー―博士の血の贖い―

ドクター・ブラッドマネー―博士の血の贖い―

  • 作者: フィリップ・K・ディック
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2005/01/22
  • メディア: 文庫

 

最後に、サンリオSF文庫のこれ以外のディック作品のタイトルを上げておく。

  1. 『時は乱れて』
  2. 『死の迷宮』 (『死の迷路』という題名で別の翻訳がでている。)
  3. 『暗闇のスキャナー 』  (創元SF文庫から復刊)
  4. 『流れよ我が涙、と警官は言った』 (ハヤカワSF文庫から復刊)
  5. 『銀河の壺直し』
  6. 『ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック1』
  7. 『ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック2』
  8. 『ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック3』
  9. 『ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック4』
  10. 『テレポートされざる者』『ライズ民間警察機構―テレポートされざる者・完全版』が創元SF文庫から刊行されるも現在絶版)
  11. 『あなたを合成します』『あなたをつくります』という題名で別の翻訳がでている。)
  12. 『シミュラクラ』
  13. 『虚空の眼』創元SF文庫から復刊)
  14. 『アルファ系衛星の氏族たち』創元SF文庫から復刊されるも現在絶版)
  15. 『最後から二番目の真実』

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コメント 18

IXY-nob

翻訳ものは苦手でほとんど読んだことはないのですが、最近洋画にはまっているので、原作はぜひ読んでみようと思います。早速「トータル・リコール」でも!
by IXY-nob (2005-10-02 21:08) 

alice-room

おお~ディックですか、しかもサンリオって!高い城~、電気羊~とか何冊かは読んでますが今回紹介されたものは読んだことないなあ~。そういえば、一時はサンリオSF文庫を、みんな競って探していた時代があったようですね。噂には聞いておりましたが、高い物はそっと眺めておりました。最近はどうなんでしょう?
SF関係も最近読んで無いし、私もまた読んでみようかな?
by alice-room (2005-10-02 21:27) 

albireo

サンリオSF文庫では、ブラッドベリの「万華鏡」と、lapis さんが「厳密にはSFでない作品」の一つと思われる「ザ・ベスト・オブ・サキ 1~2」だけを買いました。
確か、他に何か買いたいと思っていた本があった筈なのですが、気が付いたら廃刊になっていました。とても、残念だった記憶があります。
サンリオでは、他にも「ギフト文庫」という、童話集や詩集を中心とした、いい本が出ていましたが、それも今は無いようですね・・・。

ディックの作品では、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を、読んでみようとずっと思っているのですが、未だ果たせずにいます。
lapis さんの解説を読んでいたら、『ヴァリス』三部作にも興味が湧いて来ました。でも、最後の作品が絶版なのですね・・・。
by albireo (2005-10-02 21:45) 

lapis

>IXY-nobさん、nice!&コメントありがとうございます。
「トータル・リコール」は、ディックの「追憶を売ります」という短編を元にして映画化されました。文春文庫からでていた「トータル・リコール」は、ピアズ アンソニーによって長編化されたものです。これは未読ですので、面白いかどうかは分かりません。

>alice-roomさん、コメントありがとうございます。
サンリオSF文庫は、最近でも、高いものがあるようです。僕が知っているなかで一番高かったのは、記事でも書きましたが、10,500円の『ブラッドマネー博士』です。10,500円なら、僕も売りますよ。(笑)僕が持っているものは、全部定価で、買ったものです。廃刊の噂を聞いて、廃刊前にディック作品を大量に注文しました。お陰で、ディックは、全部揃いました。翻訳の質が今一つだったことも、人気がなかった原因の一つだと思います。

>albireoさん、nice!&コメントありがとうございます。
残念ながら、「万華鏡」と「ザ・ベスト・オブ・サキ 1~2」は買い損ねました。僕が持っているのは、アーシュラ・K・ル=グインを5~6冊、ロジャー・ゼラズニイを3冊、トム・リーミイ「サンディエゴ・ライトフット・スー」キース・ロバーツ「パヴァーヌ」、コリン・ウィルスン「ラスプーチン」、あとサンリオ文庫のナボコフを2冊持っています。

ディックの作品では、やはり、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』と、『高い城の男』が、お薦めです。 『ヴァリス』三部作は、賛否わかれる作品だと思います。
by lapis (2005-10-02 22:26) 

tanamasa63

ディックだぁ~!!!
サンリオ文庫からこんなにも出版されていたなんて知りませんでした。
『ヴァリス』三部作を読んで見たいですが、藤野一友に興味が出て来ました。
by tanamasa63 (2005-10-02 23:15) 

lapis

tanamasa63さん、nice!&コメントありがとうございます。
藤野一友にかんしては、夭折した画家で、シュルレアリスム的な作品を描いたということしか、知りません。この表紙に使われている絵は、どれも魅力的ですよね。
by lapis (2005-10-03 00:02) 

HAL

ちょっと怖い表紙ですね!

どの作品も、トータルリコールの感じなんでしょうか?
by HAL (2005-10-03 01:20) 

春分

私も、「ヴァリス」「聖なる侵入」「流れよわが涙、と警官は言った」「死の迷宮」「暗闇のスキャナー」「怒りの神」(最後のはディック&ゼラズニイですね)を所有しております。きちんと読んだのに内容は覚えてないかも。難解で。
しかし、ヴァリスは三部作でしたか!遺作を買ってなかったとは!
ちなみに、ディックは「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」が一番好きです。
by 春分 (2005-10-03 22:00) 

lapis

>HALさん、nice!&コメントありがとうございます。
「ヴァリス」等は、哲学的な小説で、「トータルリコール」とは、全然イメージが、違います。ディック神学の集大成といった感じで、娯楽性が薄くなっています。今回は、マニア向けの本でばかりになってしまいました。(苦笑)

>春分さん、nice!&コメントありがとうございます。
思った通り、かなりお持ちでしたね。「ヴァリス」「聖なる侵入」は、同じ年にでましたし、解説でも、2部作と書かれています。その2年後に、『ティモシーアーチャーの転生』がでているので、買いのがした方も多いかもしれません。
僕が好きなのは、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、『高い城の男』、『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』の3作です。なかでも『アンドロイド~』が一番好きです。
by lapis (2005-10-03 23:39) 

seedsbook

ちょっと忙しくしている間にディックの記事が・・・・
私はディックが大好きで、ディックの名のつく本は大分買いましたし読みました。
ヴァリスはもとより、ユービックやパーマーエルドリッジ3つの聖痕、高い城の男
など気に入っていました。何度も読み返したものです。
ディックは時々プロット崩れがおこって、そこが又面白い。。。。と言うのはファンだけが言う事ですか。。。(笑)
by seedsbook (2005-10-04 02:39) 

momo-3

うわー、読みたい本ばかり…。
by momo-3 (2005-10-04 09:54) 

miron

サンリオSF文庫、懐かしい!
無くなる時は、ちょっとした買い漁りが発生しましたね。
ディックの作品は、あっという間に売れてしまい、
欲しかったのにと、後で後悔しています。

サンリオSF文庫の全リストが以下に紹介されています。
http://www.st.rim.or.jp/~kazuyu-s/sanrio1.html
私は、最新版SFガイドマップ 作家名鑑編の上下を持っていて、
何を読もうかと、眺めるのが好きでした。
(そのくせ、全然読まなかったのですが、笑。)

『高い城の男』は読んで、その直後に岩波文庫の『易経』を買って、なるほどなぁと突き合わせた記憶があります。何も覚えていませんが。笑。

サンリオSF文庫の表紙の藤野一友さんの絵は、インパクトがありますね。
前に本屋で、『天使の緊縛—藤野一友=中川彩子作品集』を立ち読みしたことがあります。ちょっと深過ぎて、買わなかったですが、素晴らしい本です。
(こうして、いつも後で後悔してますが。)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309265804/250-4651071-6717062

以下によると、三島由紀夫や澁澤龍彦が熱愛した孤高の幻想画家藤野一友だそうです。
http://www.gaden.jp/info/2002a/021211bc/021211.htm
by miron (2005-10-04 10:18) 

lapis

>ramuさん、nice!ありがとうございます。
また、よろしくお願いいたします。

>momo3さん、nice!&コメントありがとうございます。
momo3さんも、SFがお好きですか。マニアックな本の紹介を喜んでいただけて、嬉しいです。

>mironさん、コメントありがとうございます。
僕は、幸いサンリオからでていたディックの作品は、全部持っていますが、ブラッドベリやトム・リーミイなど買い逃したものが多くて、残念です。
『天使の緊縛―藤野一友=中川彩子作品集』は、手に取った事はありませんが、僕も注文しようかどうか迷いました。いまだに迷っています。(苦笑)
いろいろ情報ありがとうございました。
今、サンリオSF文庫のアーシュラ・K・ル・グィンを書いています。よろしかったら、そちらもご覧ください。
by lapis (2005-10-04 22:35) 

seedsbook

ちゃんとしたSFリストが書けませんでした。(苦)
でも一応書いたので記事に出しました。ディックが多いので、ここにTBさせていただく事にしました
by seedsbook (2005-10-10 23:49) 

lapis

seedsbookさん、TB&コメントありがとうございます。
楽しく読ませていただきました。
ディックがドイツであまり受けていないというのが意外でした。
ヴァン・ヴォ-クトは、「スラン」ぐらいしか読んだことがありません。
by lapis (2005-10-11 00:17) 

hirose

フィリップ・K・ディックの映画では「スクリーマー」というのもありましたね。
かなりマイナーかもしれませんが、たしかロボコップ1のピーター・ウェラーが主演でした。
本では「ザップガン」なんかも好きだなあ~。
どちらにせよ最近はSFもまた隅に追いやられてきて寂しいですね。
by hirose (2006-01-27 12:32) 

lapis

hirose さん、コメントありがとうございます。
残念ながら「スクリーマーズ」は見たことがありません。少しネットで調べたら、賛否両論のようでした。機会があったら見てみたいと思います。
僕は、オーソドックスに、「電気羊~」が一番好きです。
仰るとおり、SFがマイナーになったのは寂しいことですね。
ご訪問ありがとうございました。
by lapis (2006-01-27 21:02) 

lapis

おのこうさん、nice!ありがとうございます。
またよろしくお願いいたします。
by lapis (2006-03-29 22:07) 

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SF(散歩絵、記憶箱の中身 2005-10-10 23:49)

今何読んでいる?と聞かれてサイエンスフィクションと応えて表紙を見せると、何故か”ふうん、ああ、そう。。。”と気乗りしない反応をされる事が多かったので、これは一体どういうことなのかと考えていた。 サイエンスフィクションなんて絵空事は子供向けであり、教養のある”大人”が読む物ではないと固く信…[続く]

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